『羊と鋼の森』 著 宮下奈都
「いいんじゃないの。怖けりゃ必死になるだろ。全力で腕を磨くだろ。もう少しその怖さを味わえよ。怖くて当たり前なんだよ。今、外村はものすごい勢いでいろんなことを吸収している最中だから」
『羊と鋼の森』 著 宮下奈都 出版元 文藝春秋
今回のご紹介する本は宮下奈都さんの『羊と鋼の森』です。高校生の頃に一人の調律師に出会い、同じ道を進む決意をした調律師外村直樹の成長を描く物語。簡単な登場人物の相関図を用意してみましたのでご覧ください。

ピアノの調律をする方たちがお話の中心になります。ピアノになんて全く興味がなかった青年がふとしたきっかけで、調律師の板鳥と出会いその世界に魅せられていく……。
題材としてはあまりメジャーなものではないですが、本作は難しい用語などはあまり出てこないので専門的な知識がなくても読破することは容易だと思われます。どちらかというと調律師というものを軸に、ひたむきに自分の人生にどう向き合っていくかのかを紆余曲折しながら前に進んでいこうとするお話です。
調律師とピアノを弾く人達。両サイドの色んな人間たちが主人公である外村に影響を与えていきます。客先で浴びせられる言葉が結構辛辣なものであったり、穏やかな作風であるからこそ現実感のある言葉選びなどが随所に書かれていました。職場の人間達もそこそこ癖のある人が多いですが、自分は柳信二が好きですね。理想の先輩。みたいな感じでかなり好印象です。作中でも外村と一緒に外回りにいく描写が多く、新人の外村に対しても一定の敬意を払っているのが素敵な大人に映ります。
こちらの作品映画化もされているようで、作品の雰囲気的にも映像化にもってこいのもののような気がします。映画では外村の成長がどんな風に表現されていくのか気になりますね。
今回は『羊と鋼の森』を紹介させていただきました。落ち着いた静かな物語の中に、一人の青年の成長が詰め込まれた作品ですので、ゆったりとした気持ちですらすら読める本だと思います。気になった方は購読されてみてはいかがでしょうか。それでは、今回はこの辺でまた。



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