大人の読書感想文 8冊目

本・映画

『われら闇より天を見る』 著クリス・ウィタカ― 訳 鈴木 恵

ダッチェスはうちのめされて部屋を出た。
これが自分の役目なのだ。世の中は善ではないと人々に気づかせ、思い知らせるのが。

われら闇より天を見る 著 クリス・ウィタカ― 訳 鈴木 恵  発行元 早川書房 

 今回の本のご紹介は海外作家クリス・ウィタカ―氏の著書『われら闇より天を見る』です。
文庫本の帯にも記載されておりますがこちらの作品。2022年にこのミステリーがすごいの海外編で堂々の一位を獲った作品です。ロンドン生まれの作家さんで本国でも英国推理作家協会賞最優秀賞を受賞と各国で話題沸騰中でございます。
 こちらの作品2025年の10月に文庫本となったようでして、昨年書店をふらふらしている時にたまたま目につき、つい先日読み終えることができました。


 あらすじ

 カリフォルニア州の海沿いの町ケープ・ヘイブン。幼い一人の少女が命を落とした。ここから様々な人の運命の歯車が狂い出す。十三歳の少女ダッチェス。”無法者”として生まれ生き続けている彼女の前に、三十年前に少女の命を奪った男がケープ・ヘイブンに帰ってくる。そして、運命の歯車は再び動き始めるーー。

 お話はある一人の少女が命を落とす痛ましい場面から始まります。物語の舞台はすぐにそこから三十年後にとぶわけですが、物語の起点はこの一人の少女の死から始まります。
『We Begin at the End』こちらは原題で、直訳は「私たちは終わりから始まる

本作は二人の主人公の視点で描かれる


 無法者のダッチェス。ケープ・ヘイブン唯一の警察官ウォーク。事件は二人の視点を交互に覗き見ることに進んでいきます。ケープ・ヘイブンでの悲痛な事件を引き起こした犯人ヴィンセント・キング。彼が町に帰ってきてから起こるダッチェスの母の死。二人の異なる視点から一連の出来事を紐解いていく。

キャラが強烈なダッチェス

 主人公である”無法者”のダッチェス。最初の方は無法者ってなんだよ。不良でいいだろと思って読み進めていましたがこの無法者というワードまさに彼女にピッタリでした(笑)
 冒頭のセリフはダッチェスのものですが、13歳でこんなセリフを吐ける女性は彼女しかありえません。殴る、蹴る。火を放つ、銃をぶっ放す。もうやりたい放題です。
 そんな無法者に相応しい彼女ですが私は作中で一番好きな人物です。彼女の行動は自身の置かれた境遇からくるものであり、傍からみたらとても残忍で野蛮な行為ですがダッチェス自身の信念によって選択された行動ひとつひとつに彼女の誇りの高さが窺えます。
 読み終えた方は皆同じ感想を抱くでしょう。さすが”無法者のダッチェス。


 気苦労が多い警察官

 もう一方の主人公ウォークことウォーカー。三十年前の事件で少女の遺体を発見した人物であり、その時に親友のヴィンセント・キングを失った男でもあります。
 ウォークは相関図に記載しましたが、立派な大人です。子供の頃は大人はみんなすごい。なんて妄信めいたことを誰しもが一度は思う期間もあったと思います。大人になると分かるのはく○野郎はどこにでもいるということ。
 ウォークは勿論現実にはいないのですが、本作で描かれる彼の人生は非常に苦難に満ちたものであります。自分が苦しい状況にいながらもダッチェス達姉弟やヴィンセントとの絆を守ろうと孤軍奮闘するさまはかっこいい大人の代名詞ではないでしょうか。

 一人の少女の死から始まる物語は。周囲の人間に様々な影響を及ぼしていきます。ついさっきまであった幸せが一瞬で崩壊する。一度壊れたものは永久に元へは戻らない。
 誰かのために行動したことが必ずしも相手を助けることにはならないし、逆に相手を苦しめてしまう結果につながる。
 この物語に登場する人物達は各々が傷を負っています。それぞれが違った形で心の傷に向き合う姿は人の逞しさを感じると同時に脆さをさらけだしています。
 本作はミステリー小説にはなりますが、一般的なミステリーとは違い謎解き要素はほとんどありません。だからこそこの物語によりのめりこめるような気がします。
 おすすめの作品なのでぜひ読んでみて下さい。拝読いただきありがとうございました。
それではまた。

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